1. はじめに|ジャンプやスキップが苦手な子、実は多い
「縄跳びになると全然跳べなくて…」
「スキップって教えるの難しいですね」
「ジャンプがふにゃっとなって力が入らない」
これは、私が日々の支援現場で保護者の方からよく聞く言葉です。
特に、小学校低学年になると“スキップ”“縄跳び”といった動きが求められる場面が増えてきます。でも、思うようにできずに戸惑う子もたくさんいます。
実はジャンプやスキップが苦手な子の多くは、「タイミングがうまく合わない」「動きがバラバラになる」ことに悩んでいます。これは単なる運動経験の差だけではなく、“感覚の育ち方”が大きく関係していることがあるのです。
2. 苦手に見える原因|「タイミングが合わない」には理由がある

ジャンプやスキップがうまくいかないとき、背景には次のような感覚の課題が隠れていることがあります。
■ 前庭覚(バランス・スピードの感覚)が未発達
- 地面を離れるジャンプは、バランスを崩しやすく、身体が不安定になります。
- 高さやスピードに対する“怖さ”を感じて止まってしまう子も。
■ 固有受容覚(力の入れ方の感覚)が弱い
- ジャンプに必要な“反動”や“踏み切り”の力加減が難しい。
- ふにゃっとしたジャンプになる/逆に力みすぎてタイミングが合わないことも。
■ リズム感や運動の順序がうまく組み立てられない
- スキップや縄跳びは、「左右交互」「手と足の連動」といった複雑な動き。
- 次にどの動きをすればいいか分からず混乱してしまう。
■ 身体図式(自分の体の動きや位置を把握する力)の不安定さ
- 手足を意図したタイミングで動かすことが苦手。
- “自分の身体が今どこにあるか”が感じにくく、動きがぎこちなくなる。
3. 家庭でできる!感覚を育てる“あそび支援”
では、こうした感覚の土台を、日常の遊びの中でどう育てていけるのでしょうか?
ここでは、特別な道具がなくてもできる練習アイデアを紹介します。
▷ リズムを整える
① 手拍子ジャンプ
テンポよく手を叩きながら、そのリズムに合わせてジャンプ。
→「パン・パン・ジャンプ!」のように遊び感覚で。
② 音楽に合わせて“歩く・止まる”ゲーム
音楽をかけて「ピタッ!」の合図で止まる。
→リズムと身体コントロールの両方を楽しく練習できます。
③ グー・チョキ・パー歩き
足で「グー・チョキ・パー」のリズムをつけながら前進。
→左右のリズム差を調整しながら動くことで、スキップの下地になります。
▷ タイミングと力のコントロール
① 動物ジャンプ(カエル・ウサギ・クマ)
- カエル:しゃがんで両足でジャンプ
- ウサギ:小さく連続ジャンプ
- クマ:四つ這いで手足をバランスよく動かす
→「跳ぶ力」と「力を抜く感覚」の両方を経験できます。
② 声かけリズムジャンプ
「いーち、にー、じゃんぷ!」のように、声をかけながら跳ぶ。
→テンポを外部から与えると、動きの見通しが持てて跳びやすくなります。
▷ 不安定な足場でのバランス遊び

① クッションジャンプ
布団やクッションの上で跳んでみる。
→不安定な場所でのジャンプは、前庭覚・固有覚を強く刺激します。
② タオル台ジャンプ
タオルを2〜3枚折り畳み、段差をつくって跳び越える遊び。
→地面に近い高さでも、“踏み切る力”や“空間感覚”が育ちます。
4. 声かけと環境の工夫
苦手な子どもにとっては、“できない”ことがストレスになります。
だからこそ、「できなかったこと」に目を向けるのではなく、「できた部分」を見つけて言葉にしていきましょう。
● 声かけの例
- 「惜しい!今タイミング合ってたね!」
- 「跳ぶの怖いけどチャレンジできてえらいね」
- 「1回でも跳べたらすごいことだよ!」
● 環境のポイント
- 滑りにくい床/裸足で安全な環境
- 家具をどかして広めのスペース
- 障害物や段差のない範囲からスタート
- 周りに大人がついて安心感を与える
5. おわりに|「できた!」を積み重ねることが大切
ジャンプやスキップができない理由は、単に“運動不足”ではなく、感覚のアンバランスや身体イメージの未熟さにあることも多いです。
だからこそ、焦らず・比べず・小さな成功を重ねていくことが大切です。
「跳べた!」という一瞬の成功体験が、「またやってみたい!」という次の一歩になります。
日常の遊びの中に小さな支援のヒントを込めて、子どもの身体と心の成長を、ゆっくり一緒に楽しんでいきましょう。