はじめに
「うちの子、どうして運動が苦手なんだろう?」
そんな疑問をもったことはありませんか?
実は、“運動が苦手”という状態は、単なる「運動神経の良し悪し」ではなく、発達や感覚の土台が関係しています。
本連載では、子どもの運動スキルの発達を深く理解するために、信頼できる文献をもとに理論的な視点からお届けします。
第1回のテーマは「運動が苦手ってなに?」です。
1. 運動が苦手に見える子のサインとは?
運動が苦手な子には、こんなサインが見られることがあります。
- ボールを投げても飛ばない、当たらない
- 走るとフラフラして転びやすい
- 鉄棒や跳び箱に怖がって近づかない
- 動きがぎこちなく、どこか不自然
こうした様子を見て、「不器用」「頑張りが足りない」と思ってしまうこともあるかもしれません。
でも実は、そうした“動きのつまずき”の背景には、子どもそれぞれの【発達段階】や【感覚の育ち】が深く関係しているのです。
2. 運動スキルの土台には「感覚」がある
子どもがスムーズに動けるようになるためには、以下の感覚が必要です:
- 前庭感覚(バランス感覚):身体の傾きや動きを察知する
- 固有受容感覚(身体の位置感覚):手足の動きや位置を感じる
- 触覚・視覚・聴覚の統合:環境を捉えながら体をコントロールする
これらの感覚がうまく発達していないと、自分の体を思い通りに動かすことが難しくなります。
たとえば、ジャンプしようとしても「タイミングがズレる」「両足が揃わない」などのつまずきが見られます。
3. 「運動スキルの発達段階」を知っていますか?
David L. Gallahue(ギャラヒュー)の理論では、子どもの運動スキルは以下のようなステップで発達していくとされています。
🧒 初期段階(2~3歳)
- 動きがまだ不安定で偶然性が高い
- 片足ジャンプなども難しい
👧 基本段階(3~7歳)
- 「走る・跳ぶ・投げる」などの基礎スキルが形成され始める
- 繰り返し経験することで洗練されていく
🧑 応用段階(7歳以降)
- 複雑な運動(スポーツなど)が可能に
- 複数の動きを統合してスムーズに動けるようになる
つまり、「今できないこと」は、まだその発達段階に達していないだけかもしれないのです。
焦らずに、土台から支えていく視点が大切です。
4. 親ができることは?「発達を知ること」が第一歩
✔ 子どもがどの段階にいるのかを知る
✔ 「できること」からステップアップしていく
✔ 苦手な動きの裏にある“感覚や発達のズレ”に気づいてあげる
運動は「できた!」という成功体験を積むことで、自信と意欲が育ちます。
無理に教え込むのではなく、「子どものペースを理解して寄り添う」ことが、なによりのサポートです。
おわりに
第1回では、「運動が苦手ってどういうこと?」を、感覚や発達の視点から解説しました。
次回は、【2~7歳に育てたい運動スキル】について、年齢ごとの特徴と具体的な支援方法をお伝えします。
📚 参考文献
- Gallahue, D. L. et al. (2006). Understanding Motor Development
- 文部科学省『子どもの体力向上推進資料』
- Ayres, A. J. (2005). Sensory Integration and the Child