発達段階からわかる“動きの得意・不得意”の本当の理由
はじめに
「うちの子、運動が苦手で……遺伝かな?」
そんな声を、保護者の方からよく聞きます。
でも本当に、「運動神経=遺伝」なのでしょうか?
実は、子どもの運動スキルの多くは“経験”と“発達環境”によって育まれるものです。
この回では、運動スキルの発達段階に基づいて、
子どもの「運動神経」の正体に迫ります。
運動神経とは?
― 「脳・神経 × 動き」の連携力のこと
「運動神経がいい」とは、
・体の使い方がスムーズで
・タイミングよく力を発揮できて
・動きの切り替えが上手である
といった、“脳と体のつながり”がうまく機能している状態を指します。
これは、神経系の発達 × 幼少期の多様な運動経験によって磨かれていきます。
「遺伝」よりも注目すべきは、幼少期の運動経験
多くの研究では、
遺伝よりも幼児期〜小学生時代の「環境・経験」が運動能力に影響することがわかっています。
D.L.ギャラヒューらの理論では、2歳〜7歳に「基礎的な運動スキル」が育ち、
その後、7歳以降に「応用的なスキル」へと発展していきます。
つまり──
この「基礎の時期」に、走る・跳ぶ・投げる・転がる…などの多様な動きを経験することが、運動神経の土台づくりになるのです。
なぜ「運動が苦手」になるのか?
― スキルの発達段階と未経験が原因かも
苦手の背景には以下のような理由が考えられます。
よく見られる様子 | 背景の可能性 |
---|---|
ボールを避けてしまう | キャッチ経験が少なく、タイミングがつかめない |
スキップができない | リズムや左右交互の動きが発達途中 |
鉄棒で固まってしまう | 恐怖心・ボディイメージが未熟 |
どれも、**遺伝というよりは「経験不足」や「発達の個人差」**によるものです。
親ができる“運動神経を育てる”関わり方
- さまざまな動きを経験させる
― 走る、跳ぶ、転がる、登る、投げる、受けるなど - 成功体験を積ませる
― できた!の積み重ねが、自信と動きの上達につながる - 遊びの中で育てる
― 「おにごっこ」や「バランス遊び」など、楽しさ重視で
おわりに
「運動神経」は、育てられる力です。
「うちの子は運動が苦手だから……」とあきらめる前に、
まずは動きの発達段階を知り、“伸びる時期”に“経験”を届けることが大切です。
親子で一緒に、日常の中で“楽しく動く体験”を重ねてみてくださいね。
🔖 参考文献・出典
- D.L. Gallahue, J.C. Ozmun 著『幼少年期の体育』
- 文部科学省「子供の体力向上推進資料」
- スポーツ庁『体力・運動能力調査報告書』 ほか