ドッジボールを“みんなで楽しむ”ための工夫と関わり方
前編では、投げることが苦手な子どもたちが自信を持って参加できるように、投げ方のコツや楽しい練習法をご紹介しました。
後編では、実際の活動場面で「どうすればもっと楽しめるか?」をテーマに、ルールの工夫やチームづくりのアイデア、そして感覚統合の視点からのサポート方法まで解説していきます。
どの子どもも、自分のペースで「ドッジボールって楽しい!」と感じられるようなヒントが詰まっています。
1. 苦手な子も笑顔になれる!ルールのアレンジ

柔らかいボールで安心感を
スポンジボールや新聞紙ボールなど、当たっても痛くない素材を使うことで、怖さや緊張が減り、「当たっても大丈夫!」という気持ちになります。
「痛いかも…」という不安がなくなると、動きがのびのびしてくる子も多いです。
ころがしドッジで動きを身につける
投げる代わりに“転がす”形式で始めると、逃げる側の子も安心して参加できます。スピードがゆっくりなので、目で追いやすく、動きも予測しやすいのがポイント。
投げる側にとっても「狙う」練習になり、双方にメリットがあります。
「できた!」を感じられるルールを
- キャッチできたら得点にする
- 一度外に出ても「じゃんけんで復活」できる
- 当たったけど泣かなかったらポイント
など、「小さな成功」を積み上げられるルールで、子どもたちの自己肯定感がぐっと育ちます。
2. 役割を持って関われるから楽しくなる

最初は“外野のサポーター”でもOK!
投げるのが怖い、動くのが苦手、という子には「ボールを拾って渡す」「応援する」など、試合に直接関わらない役割を提案するのもおすすめです。
子どもたちは、たとえ試合に出なくても、「自分もチームの一員」と感じることで、安心してその場にいられるようになります。
どんな関わりも“活躍”になる
・当たっても泣かずに戻ってこられた
・小さい子にやさしく声をかけた
・負けた後、チームを励ました
こうした一つひとつの行動が、その子の“活躍”であり“成長”です。できたことを言葉にしてフィードバックすることで、次の一歩に繋がります。
3. やさしさが育つチームづくり
年上の子がヒーローになる場面を演出しよう
年齢の違う子ども同士が混ざって遊ぶと、年上の子が自然とリーダーのような役割を担うことがあります。
年下の子に優しく教える
当たらないように守る
強いボールを投げずに手加減する
こうした姿を見つけたら、大人がしっかり言葉で「いいね、かっこいい」と伝えましょう。子どもたちは、“やさしさもかっこいい”と気づき、自信へと変えていきます。
勝ち負けよりも大切なことを振り返る
試合のあとは、ただ「勝った」「負けた」だけで終わらせず、こんな声かけをしてみましょう。
- どんな声かけがうれしかった?
- 協力できた場面はあった?
- どんな気持ちだった?
感情や人との関わりに目を向けることで、ドッジボールが“人間関係を育てる遊び”になります。
4. 感覚統合の視点からのサポート
目で見て、体を動かす力を育てる
「ボールが見えているけどうまく避けられない」
「どこに投げたらいいか分からない」
そんな子どもたちは、「視覚と動きの連携」が育ちきっていない可能性があります。
おすすめの遊び:
- ゆっくり転がってくるボールをまたぐ
- カラフルなボールや光るおもちゃで“注目する力”を引き出す
バランス感覚の育て方
- バランスボードの上で投げる
- 片足立ちでキャッチしてみる
など、“グラグラする環境”で遊びながら、体の軸が整っていきます。
「力加減」が難しい子には…
- タオルを振ってボールのように投げてみる
- 新聞紙ボールや紙飛行機を遠くに飛ばす遊びを取り入れる
「こうすると飛ぶんだ!」という体感を積むことで、力のコントロールが自然と育ちます。
おわりに:どの子にも、楽しめる居場所を
ドッジボールは、「投げて当てるゲーム」だけではありません。
そこには、 ・自信をつけるチャンス
・仲間とのつながり
・やさしさが育つ時間
があります。
えいと運動教室では、小児リハビリ専門の理学療法士が感覚統合の視点を大切にしながら、一人ひとりの「できる」を見つけて、子どもたちが自分らしく輝ける場所をつくっています。
苦手な子も、得意な子も、みんなが一緒に楽しめるドッジボールの時間。
その一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。