体幹×感覚統合をふまえた運動支援の実践ポイント
1. よく転ぶ、ふらつく…それ、“感覚”が原因かも?
「ちょっとした段差でつまづく」
「ジャンプの着地でふらつく」
「平均台や片足立ちが苦手」
そんなふうに、“バランスの不安定さ”が気になる子、いませんか?
私が理学療法士として出会ってきた子どもたちの中にも、
「動きはできてるのに、なんだかよろけやすい」
「がんばってるのに、バランスが崩れてしまう」
といった様子を見せる子が多くいます。
そして、その原因をたどっていくと…
多くのケースで“体幹”と“感覚の土台”に共通点があるのです。
2. 家庭で見られるバランス感覚の“苦手サイン”
以下のような動きが見られたら、バランス感覚がまだ育ち途中かもしれません。
- 片足立ちをするとすぐにグラグラする
- 平均台や細い道を歩くのが怖い・苦手
- ジャンプして着地すると、バランスを崩してしまう
- 階段をテンポよく登れず、手すりに頼る
- 足元をよく見ながらでないと歩けない
- 座っているときに体がグラグラ揺れやすい
ポイントは、「動きができるか」だけでなく、
“止まる力”や“支える感覚”があるかを観察すること。
3. バランス感覚って何?|体幹と感覚のつながり
バランス感覚とは、単に「体の動かし方」ではなく、
「自分の体が今どこにあるか」「どのくらい力を入れるか」
を“感じ取り・調整する力”のことです。
これには以下のような感覚が関係します:
🔸 固有受容覚
筋肉や関節からの感覚。
→「今、どこに体があるか」「どのくらい曲がっているか」を感じる力。
🔸 前庭覚
頭の位置や動きを感じるバランス感覚。
→「傾いてる!」「止まるぞ!」という体の中のセンサー。
🔸 体幹の安定性
これらの感覚を受け止め、支える軸になる。
→ 中心がしっかりしているからこそ、揺れても戻れる。
つまり、バランス感覚とは
「感覚×体幹」がセットになってはじめて機能する力なのです。
4. 家庭でできるバランス支援あそび
バランス感覚は、がんばらせる運動ではなく、
“遊び”の中で自然に育てていくことができます。
▶ クッション平均台あそび
丸めたバスタオルやクッションを並べて、その上を歩く。
→ 足の裏の感覚とバランス調整力が育ちます。

▶ 片足立ちチャレンジ
「5秒静止ゲーム」「お皿を頭にのせて静止」など
→ 自分の“軸”を感じる経験に。鏡を見ながら行うと◎

▶ 着地で止まる遊び
ジャンプして「ピタッとストップ!」と声かけ。
→ 重力への対応(前庭覚)と体幹の連動が育ちます。

▶ 雑巾がけレースやクマ歩き
→ 全身の連動と、“低重心で支える力”を育てる定番遊び。

▶ 目をつぶって体をゆらす・まっすぐ立つ
→ 固有受容覚を育てる「見ないでも体を感じる」体験に。

5. まとめ 〜バランス感覚は“感じる力”から始まる〜
子どもの「よろけやすさ」や「ふらつき」は、
努力不足でも運動音痴でもなく、
体幹と感覚の未熟さからくる自然な発達途中のサインかもしれません。
そして、それはトレーニングではなく、
「体を感じながら動く経験」
「止まってみる遊び」
「できた!と感じられる体験」
によって、ゆっくり育っていきます。
今日からできる、少しの工夫と“感覚に寄り添う支援”。
お子さんの“まっすぐ立てた!”の瞬間を、一緒に喜びましょう。
📚 参考文献
- 佐藤哲史・森田哲史(2020). 動作感覚の教科書. 黎明書房.
- Ayres, A. J.(2005). 感覚統合と運動発達. 明石書店.
- 日本小児理学療法学会(2022). 子どもの運動発達と理学療法. https://jspt.or.jp
- DESCラボ(2023). 発達性協調運動障害と感覚の支援に関する解説
- Papamo(2024). バランス感覚を育てる親子運動 https://papamo.jp