~運動協調性の発達と、支援のヒントをご紹介します~
はじめに
「うちの子、なんだか動きがぎこちない…」
「よくつまずく」「ボールをうまく投げられない」
そんな悩みを感じたことはありませんか?
子どもの「ぎこちない動き」には、運動能力そのものだけでなく、“脳と体の連携”に関わる協調運動の発達が深く関係しています。
本記事では、小児理学療法士の視点から「運動協調性とは何か?」をわかりやすく解説しながら、ご家庭でできるサポート方法をご紹介します。
1. 協調運動とは?〜「体がうまく動かせない」子の見え方〜
運動協調性とは、「脳と体がスムーズに連携しながら動く力」です。
これは運動の「質」を決める大切な要素で、たとえば以下のような場面で差が出ます。
- ボールを投げるときに狙った方向へ飛ばない
- スキップやケンケンができない
- タイミングよくジャンプできない
- 身体が左右にぶれてバランスを崩す
これらの子は、筋力や体力はあっても「うまく動けない=動作の調整が苦手」なことが多く、**発達性協調運動障害(DCD)**と診断されるケースもあります。
2. 運動協調性はどこで育つ?~脳のはたらきと感覚入力~
協調運動を支えるのは、筋力だけではありません。
**小脳、前庭器官、固有受容覚(深部感覚)**といった“感覚と運動をつなぐ脳機能”が深く関わっています。

- 小脳:運動のタイミングや力加減を調整する司令塔
- 前庭覚:バランスや姿勢制御を支える
- 固有受容覚:関節や筋肉の動きを正確に脳へ伝える
これらの感覚がうまく統合されることで、「動きがスムーズにつながる」経験が積み上がっていきます。
3. 家庭で見られる“ぎこちなさ”のサインとは?
保護者の方が気づきやすい、協調運動のつまずきサインを紹介します。
- 不器用で、はさみ・箸・筆記具が苦手
- ボールがキャッチできない・怖がる
- 運動会や体育の授業を嫌がる
- つまずいたり転んだりが多い
- ダンスや手遊びで動きがバラバラ
これらの特徴がいくつも当てはまる場合は、協調運動の支援が必要なサインかもしれません。
4. ご家庭でできる!運動協調性を育てるあそび
協調運動は“遊び”を通じて楽しく育てることができます。
以下のような遊びがオススメです。
● クマ歩き・ワニ歩き
→ 手足の連動を促進し、体の使い方がうまくなる
● ボールあそび(転がしキャッチ、ターゲット当て)
→ 目と手の協応、タイミングの認識を養う
● ステップあそび(けんけんぱ・ジグザグジャンプ)
→ 動作の切り替え・重心移動の調整に効果的
● 手遊び歌・まねっこ体操
→ リズムに合わせた全身の協調性アップに◎
5. 保護者のサポートが“動きの自信”を育てる
動きがぎこちない子にとって、**「失敗しない環境」「見守る姿勢」「成功体験の積み重ね」**がなにより重要です。
- 苦手な動きは遊びで分解し、得意な動きとつなげる
- 成功しやすい課題からステップアップ
- できた時はすぐに「できたね!」と共感してあげる
子どもは“できた”を重ねることで、自信と運動への前向きな気持ちを育んでいきます。
まとめ|“ぎこちなさ”の背景には、脳と体の発達が関係している
運動がぎこちない子どもには、筋力や体力の問題だけでなく、
脳と体の連携=運動協調性の発達の遅れが関係していることがあります。
大切なのは、「本人のせいではない」という理解と、適切なステップでの支援です。
子どもの「うまくできない」には理由があり、寄り添いながら育てていくことで、
“できるようになる喜び”と“運動が好きになるきっかけ”が生まれます。
📚 参考文献
- Ayres, A. J. (2005). Sensory Integration and the Child.
- 藤原俊之 他(2022)『子どもの動きを見守る発達支援ガイド』
- 文部科学省(2021)『子供の体力向上推進資料』