姿勢が崩れてしまう理由と支援法

運動が苦手な子の支援

集中力や学習姿勢にも影響する“軸の弱さ”とは


1. 姿勢が崩れるのは「やる気がないから」じゃない

「机に向かってても、すぐにダラッとしてしまう」
「集中してほしいのに、気づいたら横を向いていたり、体がくねくね動いてる…」

そんなふうに、姿勢が気になるお子さんはいませんか?

私が理学療法士として出会ってきた子どもたちにも、そうした“姿勢の崩れやすさ”を持つ子はたくさんいます。

でも、私が伝えたいのはこれです。

「姿勢が崩れる=やる気がない」ではありません。

姿勢を保つというのは、実はとても難しい動作です。
そしてその土台には、“体の軸=体幹”を支える力や感覚があるんです。


2. 家庭でよく見られる“姿勢崩れ”のサイン

まずは、ご家庭や学校で見られる姿勢の崩れ方をいくつか紹介します。

  • 椅子にまっすぐ座っていられず、すぐ前かがみになる
  • 背もたれにダラッともたれてしまう
  • 足をぐねぐね動かす、机に寄りかかる
  • 宿題中に姿勢が崩れ、「手だけで書く」状態になっている
  • フロアに座っていると、すぐ横になったりゴロゴロし始める

これらは、「やる気がない」「姿勢が悪い」という表面だけで見ると、
つい注意したくなる行動かもしれません。

でもその背景に、“軸を保つ感覚”の未発達がある場合もあるのです。


3. なぜ姿勢が崩れるの?|“軸の弱さ”という視点

姿勢保持に関わるのは、単なる筋力だけではありません。

体の「どこに軸があるか」「今どう動いているか」を感じ取り、
それを調整する“感覚の力”が大きく関わっているのです。

🔸 体幹の安定性

→ 背骨まわりや腹部のコアがしっかり働いているかどうか。

🔸 固有受容覚(筋肉・関節の感覚)

→ 自分の体の位置や姿勢を「無意識に」感じ取る力。

🔸 重力への適応感覚(前庭覚)

→ 重力に対して“どのくらい力を入れるか”を調整する力。

🔸 身体図式(自分の体のイメージ)

→ 自分の体がどう動くか、どこまで広がっているかの感覚。

これらがうまく育っていないと、
「まっすぐ座る」「じっとしている」「視線を安定させる」ことが難しくなります。


4. 家庭でできる姿勢サポート|遊び・環境・声かけ

姿勢の崩れを防ぐには、「叱る」「我慢させる」ではなく、
日常の中で“軸の感覚”を育てていくことが大切です。

▶ 動きの遊び

  • クマ歩き、カエル跳び、トンネルくぐりなど
     → 体幹〜手足が同時に働く動きで、体の中心感覚が育ちます。
  • 雑巾がけ・イス押しなどの“重さを押す”遊び
     → 体を支える力を自然に引き出します。

▶ 環境の工夫

  • 椅子の足に足台を置く(ぶらぶら防止)
  • 背中にクッションを入れて安定させる
  • 姿勢が崩れたら“指摘”ではなく、“気づかせる工夫”を
     (例:「背中シャキーンマン来たよ!」など)

▶ 声かけのヒント

  • 「まっすぐして!」よりも、「ロボットみたいに動いてみよう」など遊びの要素を入れる
  • 「ダラダラしない!」より、「体が疲れてきたね〜ストレッチしよっか」と気分転換を提案
  • 正しい姿勢を“体感できるポーズ”に変換する(忍者座り、スーパーヒーローポーズなど)

5. まとめ 〜まっすぐ座るには、まっすぐ感じる力が必要〜

姿勢が崩れる子どもたちは、ただ“気をつけていない”わけではありません。

「どうやって体を支えたらいいのかが分からない」
「力の入れ具合がわからない」――そんな“感覚の迷子”になっていることもあるのです。

姿勢を保つには、“感じる力”と“支える軸”が必要です。

だからこそ、責めるよりも、“育てていく”という視点でかかわっていきましょう。

あなたのお子さんが、少しずつ“まっすぐ”を体で感じられるようになる過程を、
一緒に支えていけたらうれしいです。

タイトルとURLをコピーしました