発達障害の子どもが運動でつまずく理由とは？

感覚統合の視点で見える体と感覚の課題

はじめに｜「運動が苦手」という悩みの裏にある“見えにくい課題”とは？

「どうしてうちの子は走り方がぎこちないの？」
「体育の授業になると不安そうな顔をする…」
そんな不安を抱えている保護者の方も多いのではないでしょうか。

発達障害のある子どもたちは、体を動かすことに対して“つまずき”を感じやすい傾向があります。
でもそれは、本人のやる気や努力の問題ではありません。

実は、感覚の整理がうまくいかないことが、運動のぎこちなさにつながっているケースが多くあります。

本記事では、感覚統合の視点から、発達障害の子が運動でつまずく理由と、家庭でできるサポートについてご紹介します。

まず、どんな場面で「運動のつまずき」が見られるか、いくつかの例を挙げてみましょう。

こうした様子は、周囲から「運動が苦手」「不器用」「集中していない」と誤解されがちですが、
実は感覚処理や身体イメージのつまずきが背景にあることが少なくありません。

感覚統合とは、視覚や触覚、バランス感覚、筋肉の感覚など、さまざまな感覚を整理し、うまく使えるようにする力のこと。
この感覚の整理がうまくいかないと、運動にもさまざまな影響が出てきます。

前庭覚（ぜんていかく）は、体の傾きやスピードを感じてバランスをとる感覚です。
この感覚が未発達な子は、走ったりジャンプしたりするときに体が安定せず、ふらついたり転びやすくなります。

固有受容覚（こゆうじゅようかく）は、関節や筋肉の動きを感じるセンサーです。
この感覚がうまく働かないと、力を入れすぎてしまったり、逆にまったく力が入らなかったりすることがあります。

その結果、「ぎこちない動き」「動きすぎ」「止まれない」といった姿が目立つのです。

発達障害の子の中には、触覚や視覚・聴覚などの感覚に対して過敏だったり、鈍感だったりする子がいます。

こうした感覚過敏があると、運動どころではなくなってしまうこともあります。

身体図式とは、「自分の体が今どう動いているか」「どこにあるか」を感じる感覚のこと。

この感覚がうまく育っていないと、手足をうまく動かせなかったり、空間の中で自分の動きを調整できなかったりします。

結果として、走る・跳ぶ・投げるといった動作がバラバラに見えてしまうのです。

苦手を「克服」しようと頑張るよりも、感覚を育てる土台づくりを意識することが大切です。
ここでは、家庭や学校でできる具体的な工夫を紹介します。

→ 固有覚が育ち、「力の入れ方」が自然にわかってきます。

→ 体幹と前庭覚が刺激され、動きのブレが減ります。

「まねしてみて」ではうまくいかない子には、
まず“感じる”体験（押す・引く・踏む・ゆらす）をじっくり取り入れてから、運動に入るとスムーズです。

いきなり体育的な「ルールのある運動」ではなく、
自由に動ける遊びや、好きな動きから入ると“できた感覚”を育てやすくなります。

→ 感覚が過敏な子ほど、刺激が少ない環境が安心材料になります。

発達障害のある子どもが運動に苦手意識を持つのは、「感覚」や「身体イメージ」の育ちに時間がかかっているからかもしれません。

「できないことをがんばらせる」よりも、
「感覚や動きをじっくり育てる関わり」を続けていくことで、自然と体は整っていきます。

ひとりひとりの感じ方・動き方に寄り添いながら、焦らず、その子らしいペースで成長を応援していきましょう。

発達障害のある子どもの運動の苦手さは、「感覚の整理」や「体の使い方のクセ」に関係していることも。
えいと運動教室では、無料の【運動タイプ診断チェック】を公開中です！