〜息を止めるのが怖い子に、どうアプローチする?〜
はじめに:顔はつけられる。でも“潜る”のが怖い…
「水に顔はつけられるけど、潜るのは怖いみたいで…」
「プールの中で目をつぶったまま動けず、沈めないんです」
そんなお悩み、意外と多く聞かれます。
顔つけはクリアしているのに、なぜ次のステップでつまずくのでしょうか?
この記事では、子どもが潜れない理由と、家庭でもできる感覚的アプローチを紹介します。
潜れない理由は「感覚の未発達」や「不安」にある
潜る動作には、次のようなスキルが求められます。
水中での運動発達段階

■ 息を止める感覚(呼吸の自己コントロール)
呼吸を自分でコントロールできないと、水中に入る前にパニックになってしまうことがあります。
■ 圧迫刺激や水圧に対する耐性(固有受容覚)
水の重さや耳・鼻への刺激に敏感な子は、「潜る=怖い刺激」と感じやすくなります。
■ 視覚が使えない状態での不安(空間認知・前庭覚)
水中では目を開けない子も多く、見えない中でバランスをとる感覚が必要になります。
家庭でできる「潜る前のステップアップ練習」
① コップブクブク呼吸
口でぶくぶくと泡を出す練習を繰り返し、息を吐く感覚と呼吸のコントロールを身につけましょう。
② 風船ふくらましゲーム
息を溜めて一気に吐き出す遊びを取り入れ、呼吸筋を鍛えます。
③ お風呂で“耳つけ・おでこつけ”練習
お風呂で寝転ぶようにして、耳や後頭部を湯に沈める感覚に慣れていきます。
④ 水中メガネをつけて“水中観察ごっこ”
ゴーグルを使って、洗面器や浴槽の中のおもちゃを見つけるゲーム。視覚が遮られない状態からスタートできます。
⑤ 潜るマネっこ → 一瞬だけ潜ってみよう
お風呂の中で「せーの!」と一緒にやることで、遊びの中で“潜る感覚”にチャレンジできます。無理なく短時間から始めましょう。
声かけのヒント:「できた」より「やってみたね!」を大切に
- 「一瞬だけ潜れたね!」「今日は顔を全部つけてみたんだね!」
- 「見えない中でも落ち着いていられたね」
- 「せーので潜るの、タイミング合ってきたよ!」

「がんばり」を見つけてあげることが、次の一歩につながります。
おわりに:少しずつ“体の感覚”を信じられるように
潜るという行為は、実は子どもにとってとても大きな挑戦です。
だからこそ、感覚の土台を整えながら、安心できる環境で一歩ずつ進んでいくことが大切です。
「顔はつけられるけど潜れない」
そんなステップの“間”に寄り添う支援を、家庭の中でも楽しく取り入れていきましょう。
参考文献・参考サイト
子ども発達支援研究会(水泳や運動支援に関する資料・研修)
https://hattatsu.or.jp/)
『感覚統合と運動感覚の教科書』医道の日本社
https://www.ido-nippon.com/book/52252/
神奈川県「幼児期における運動の指針」
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/x3t/cnt/f537198/p1090670.html
公益財団法人 運動器の健康・日本協会
https://www.bjd-jp.org/