第3回 顔もつけられるし潜れるけど、“泳げない”子への支援法

運動種目

〜水中で“動けない”“進めない”子への感覚的アプローチ〜


はじめに:水に慣れているのに泳げないのはなぜ?

「顔もつけられるし、潜れるのに…泳ぐと進まない」
「浮かぶことはできるけど、手足がバラバラで動きがぎこちない」

そんな子どもたちには、“水中で体をコントロールする感覚”がうまく育っていない場合があります。
この記事では、泳げない子どもの背景にある感覚統合と身体の使い方の未熟さ
を丁寧にひもときます。


泳げない理由①「浮く」「進む」感覚の未獲得

水中では浮力が働くため、地上とは全く違う力加減が必要です。
次のような感覚が未発達だと、水中で動くのが難しくなります。

■ 固有受容覚の未発達

体のどこに力を入れれば動けるか分からない。
→ 力みすぎたり、手足がバラバラになる。

■ 前庭覚・バランス感覚の弱さ

浮いているときに不安定さを感じやすい。
→ 背中が丸まり、姿勢が崩れて沈んでしまう。


泳げない理由②「動作の協調」が苦手

陸上ではできていても、水中でタイミングよく手足を動かすことができない子もいます。
これは「運動協調性の未熟さ」によるものです。

  • 手をかくタイミングと足のバタ足が合わない
  • 呼吸との連携が難しく、苦しくなってしまう
  • 頭と胴体の動きがバラバラになる

家庭でできる支援|泳ぐ前に育てたい“動きの感覚”

① 浮力感覚を育てる:ビート板・浮き輪遊び

背中やお腹に浮き具を当てて、**「浮いている感覚」**に慣れるところから始めましょう。

② バタ足ごっこ(お風呂や陸で)

手すりや浴槽のフチにつかまって、足だけをバシャバシャ動かす練習。
股関節の可動性やリズム感が養われます。

③ スーパーマンポーズ(仰向け・うつ伏せ)

両手を前に出して「飛んでるポーズ」をキープ。
体幹の安定と「真っすぐ伸びる感覚」が育ちます。

④ 陸上での“クロールごっこ”

マットの上などで手足を交互に動かす練習。
運動の協調性動作の順序性を遊びながら身につけます。


声かけのヒント:「形」より「感覚」に注目しよう

  • 「さっきより、足がよく動いてたね!」
  • 「水の中で体がまっすぐになってきたね」
  • 「今日も“浮いてる感じ”つかめたね!」
理学コメント
理学コメント

フォームを直すよりも、「動いた実感」や「手ごたえ」を見つけてあげることが大切です。


おわりに:泳ぎは“技術”ではなく“感覚”の積み重ね

泳ぐことは、実は“スポーツの技術”というよりも、
「浮く」「息を止める」「力を伝える」といった感覚の総合力で成り立っています。

“泳げない子”の中には、
「頑張ってるのに体がついてこない」子がたくさんいます。
焦らずに、遊びの中で感覚を育てる支援を取り入れていきましょう。

参考文献・参考サイト

子ども発達支援研究会(水泳や運動支援に関する資料・研修)
 https://hattatsu.or.jp/

『感覚統合と運動感覚の教科書』医道の日本社
 https://www.ido-nippon.com/book/52252/

神奈川県「幼児期における運動の指針」
 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/x3t/cnt/f537198/p1090670.html

公益財団法人 運動器の健康・日本協会
 https://www.bjd-jp.org/

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