はじめに|学校生活の“土台”になる運動発達
小学校に入学する6歳の子どもたち。
毎日の登下校、体育の授業、遊びの時間——日常生活の中で、「姿勢が崩れやすい」「すぐ疲れてしまう」「なわとびが苦手」といった悩みを耳にすることが増えます。
でもそれは、ちょうどこの時期が体の“軸”を育てるタイミングだからです。
6歳は、姿勢・バランス・持久力といった運動の土台がぐっと伸びる年齢です。今回は、小児リハの専門家である私の視点から、6歳で育てたい運動能力と、家庭でできる支援法をご紹介します。
6歳児で身につけたい基本動作と目安
文部科学省や各自治体の資料をもとに、6歳児で多くの子が獲得する動作は以下の通りです。
運動動作 | 目安 |
---|---|
なわとび(二重跳び前の連続跳び) | 10回以上連続で跳べる |
片足立ち | 15〜20秒キープ可能 |
鉄棒のぶら下がり・前回り | 腕で支えて体をコントロールできる |
平均台歩き | 途中で落ちずに最後まで進める |
長距離歩行・小走り | 疲れずに300〜500m程度は移動できる |

特にこの時期は、持久力やバランス感覚、体幹を使った姿勢保持がポイントです
発達の背景にある感覚や身体のしくみ
6歳の子どもが身につけていく運動スキルは、表面的な「動きの形」だけでなく、体の中にある感覚の育ちと密接に関係しています。
🔸 体幹の安定性
→ 姿勢をまっすぐに保つために欠かせない土台の力。
🔸 固有受容覚
→ 自分の体の動きや力加減を“感覚”で感じる力。
🔸 前庭覚(重力バランス)
→ 頭の位置、傾き、揺れに対応して体を支える感覚。
🔸 身体図式
→ 自分の体がどこにあって、どう動くかを理解する力。
こうした“中の感覚”が育つことで、跳ぶ・走る・回るなどの運動に安定感が出てきます。
家庭でできるチェックポイントと遊び例
学校生活にもつながる「姿勢」「バランス」「集中して体を動かす力」を育てるには、遊びがいちばんの近道です。
✅ チェック①:姿勢が崩れやすいか?
→ 食事中や椅子に座っていると、背中が丸くなったりダラッとするか?
遊び例:
- クッション平均台あそび(バランス力UP)
- 椅子に足台・背もたれクッションで支える環境づくり
✅ チェック②:なわとびが続かない
→ 2回目がすぐ引っかかる?ジャンプのリズムがずれる?
遊び例:
- 縄を使わず“その場ジャンプ”から始めて感覚づくり
- 「ピタッとジャンプ」で着地コントロールの練習
✅ チェック③:長く動くのが苦手
→ 遊びの途中で「疲れた」「もうやめたい」が頻発する?
遊び例:
- クマ歩き・雑巾がけレースなど“低重心”の全身運動
- 家族で「歩くミッション」遊び(買い物中など)
運動が苦手な場合の支援のヒント
6歳で“動きに差”が出てきても、それはごく自然なことです。
学校生活や集団行動が始まり、「できる・できない」が可視化されやすい時期だからこそ、支援の仕方が大切です。
- 失敗を責めず、“できた”を一緒に見つける
- 難しい動きは“分解”して段階的に練習
- 家族との遊びの中で安心してチャレンジできる場をつくる
苦手がある子こそ、「楽しく体を動かせた」経験が“運動嫌い”を防ぎます。
理学療法士として伝えたいこと|“できる”より“楽しい”が先!
私は理学療法士として、6歳前後の子どもたちを支援する中で、
「楽しそうに動いている子は、確実に変化する」
ということを何度も目の当たりにしてきました。
家庭の中でのたった10分の“親子運動タイム”が、子どもの身体と心にとって、大きな自信につながることもあります。
“できる”よりも先に、“楽しかった”を。
そんな時間を積み重ねていけるような、支援や遊びをこれからも紹介していきます。
📚 参考文献
- 文部科学省「幼児期運動指針」
- 幼児の体力向上推進資料(文科省)
- Gallahue, D. L.『Understanding Motor Development』
- McClenaghan & Gallahue(1982)”Assessing Motor Development in Young Children”
- 神奈川県作成「幼児の体力向上・運動発達資料」など