はじめに|「できる・できない」の差が広がる7歳
小学校生活に少し慣れてきた7歳。体育の授業や休み時間の遊びを通して、「あの子は速いけど、うちの子は…」という比較が見え始める時期です。
でもこの“差”は、運動神経の才能の問題ではなく、多くはバランス感覚や体の使い方の違いからくるもの。
この時期こそ、正しい視点で支援すればぐっと伸びるチャンスなのです。
理学療法士として、現場で出会う子どもたちの姿と重ねながら、「今、家庭でできること」をお伝えします。
7歳児で育てたい基本動作と発達目安
文部科学省の資料(子どもの体力向上推進資料)や各自治体の「発達のめやす」をもとに、7歳で期待される主な運動動作は以下の通りです。
運動動作 | 発達の目安 |
---|---|
スキップ・リズムジャンプ | リズムに合わせてスムーズにできる |
平均台・片足バランス | バランスを保ちながら歩ける・片足立ち20秒以上 |
前転・後転・側転 | 身体をコントロールしながら回れる |
ボール投げ(距離・狙い) | コントロールして目的方向に投げられる |
障害物をよける・飛び越える | 体の大きさを意識してスムーズに移動できる |
この時期は、「体を動かす土台が完成」するのではなく、**動きを“つなげる”力(協調性)**がぐんと育つ段階です。
動きの背景にある“感覚”と“協調運動”の発達
運動の苦手さは、よく「不器用」「運動神経が悪い」と表現されがちですが、
本当の背景には、以下のような感覚や統合の発達が関係しています。
🔸 協調運動(コーディネーション)
→ 複数の動きを“同時に”組み合わせてコントロールする力。
例:スキップ(足の動き+腕のふり+リズム)
🔸 固有受容覚
→ 関節や筋肉の位置を“無意識に”感じ取る力。
🔸 身体図式
→ 自分の体の大きさ・位置をイメージして動かす力。
例:物にぶつからず通る、距離感をつかんで跳ぶ
🔸 リズム感覚・空間認知
→ 音や周囲の動きに合わせて自分の動きを調整する力。
こうした感覚は、Gallahue教授の「運動発達モデル」でも、7歳以降は「協調・応用」へ移行する過渡期として重要視されています。
家庭でできるチェックポイントと遊び例
✅ チェック①:動きがぎこちない
→ スキップやケンケンがうまくつながらない?
遊び例:
- ケンケンパの音楽バージョン(リズム合わせ)
- ステップ踏みゲーム(マス目や色を使って)
✅ チェック②:姿勢が崩れやすい
→ 片足立ちがグラグラ、座っていると姿勢が崩れる?
遊び例:
- クマ歩き、雑巾がけで“軸”を育てる
- 枕バランス・平均台ごっこ(柔らか素材で)
✅ チェック③:空間把握が苦手そう
→ モノによくぶつかる、障害物をよけにくい?
遊び例:
- トンネルくぐり、テープ迷路
- ボール転がしキャッチ(狙いと距離感)
つまずきの見え方と支援のヒント
7歳になると、周囲の子との「差」が目立ってきやすい時期です。
特に体育の授業などで自信を失い、“運動きらい”に傾いてしまう前に、以下の工夫が大切です。
- 1つの動作を“分解”して練習する(スキップ→ケンケン+ジャンプ)
- できる動作から入って、「自分でもできた!」を積み重ねる
- 動きの意味を言葉で伝えて、理解を助ける(“今、体をまっすぐにしてみようか”)
苦手な動きほど、焦らず、遊びに変換して繰り返すことが鍵になります。
理学療法士として伝えたいこと|“苦手”は伸びしろになる
私は小児の運動支援に関わっていて、7歳前後の子どもたちに何度も勇気をもらってきました。
最初はスキップが全然できなかった子が、数週間後には笑顔で鬼ごっこをしている。
“苦手”だったことが、ふとした瞬間にできるようになる――その変化をたくさん見てきました。
運動発達において、7歳は「分かるけど、まだ不安定」な時期。
でも逆に言えば、支援の効果がとても出やすい時期です。
焦らず、楽しく、そして“できた!”を一緒に喜びながら進んでいける関わりを、これからも届けていきたいと思います。
📚 参考文献・根拠
- 文部科学省「幼児期運動指針」「子どもの体力向上推進資料」
- Gallahue, D.L.『Understanding Motor Development』
- McClenaghan & Gallahue(1982)”Assessing Motor Development in Young Children”
- 苫小牧市「運動発達のめやす」
- 神奈川県「子どもの発育・発達に関する資料」