はじめに|「応用力」が育ち始める8歳
「跳び箱は飛べるけど、リレーになると遅れちゃう…」
「ボールは投げられるのに、試合になると混乱してしまう」——
8歳は、“基本的な動き”を応用し、複雑な運動やチームスポーツに取り組む段階に入る年齢です。
それだけに、「できる子」と「苦手な子」の違いが、ますます目に見えてくる頃でもあります。
でも、焦る必要はありません。
理学療法士として感じるのは、「8歳は、動きの組み合わせ=“応用力”が一気に伸びるタイミング」だということ。
今回は、8歳で育てたい運動スキルと、その苦手を乗り越える支援法をお伝えします。
8歳児で身につけたい運動スキルと発達目安
文部科学省の「子どもの体力向上推進資料」や地方自治体のガイドラインを参考に、8歳児で期待される主な運動スキルは以下の通りです。
運動スキル | 発達の目安 |
---|---|
跳び箱(5段〜6段) | 助走・踏切・着地までスムーズにできる |
鉄棒(逆上がり、前回り) | 力とタイミングをコントロールできる |
なわとび(二重跳び) | 連続で3回以上跳べる |
ボール操作(投げ・受け・蹴り) | 目的に応じた強さ・方向で操作できる |
リレーや鬼ごっこ | 周囲の状況を見ながら走る・止まるができる |
ここで注目すべきは、動作の精度+状況判断+瞬発力といった“応用力”が問われるようになる点です。
“応用力”を支える身体と感覚の発達とは?
8歳の動きのベースには、以下のような身体的・感覚的な力が関わっています。
🔸 協調運動(コーディネーション能力)
→ 動きを正確にタイミングよく連動させる力(例:助走→踏切→ジャンプ)
🔸 反応・敏捷性(アジリティ)
→ 外からの刺激に対して瞬時に動きを変える力(例:スタート合図で走り出す)
🔸 空間認知力
→ 自分とボールや相手の位置関係を把握する力(例:パスを受ける・避ける)
🔸 判断力と集中力
→ 周囲の状況を見ながら「どう動くか」を即座に判断する力(例:リレーのバトン渡し)
これらは脳と体の協調が本格的に発達するタイミングで育っていく能力です。
家庭でできるチェックと遊び例
✅ チェック①:動きの切り替えが苦手
→ 急に止まれない/曲がれない/ぶつかりやすい?
遊び例:
- スタート&ストップゲーム(音で止まる/動く)
- ジグザグ走りやバランス変化のある鬼ごっこ
✅ チェック②:タイミングがズレる
→ 跳び箱や鉄棒で“勢い”が合わない?
遊び例:
- トランポリンや踏み台昇降でリズム感を育てる
- 手拍子に合わせてジャンプや足踏み(音と動きの一致)
✅ チェック③:ボール操作がうまくいかない
→ 投げる力加減・タイミングが合わない?
遊び例:
- ボール壁当てキャッチ(反射的に動く練習)
- ターゲットめがけてソフトボールを投げる遊び
「体育が嫌い」になる前にできる支援とは?
この時期、スポーツや体育で「自分は苦手」と思い込み始める子も少なくありません。
“できない”体験の積み重ねが、自信喪失や運動嫌いにつながってしまうのです。
そこで大切なのは、
- 「できること」に目を向ける声かけ
- 比較でなく「昨日の自分」との成長に注目
- 小さな達成感をこまめに一緒に喜ぶ
たとえば「2重跳びが1回できた!」なら、それを大いに称賛することが“やってみよう”につながります。
理学療法士として伝えたいこと|“得意なこと”から自信を育てよう
私はこれまで、小学生の運動支援に関わってきましたが、
**8歳は「運動の応用期」**であり、ここでの経験が今後の“好き・嫌い”を大きく左右するように感じています。
リズムに乗って動ける子
マット運動が得意な子
とにかく速く走るのが好きな子
——どんな子にも、必ず“得意なこと”があります。
まずはそこを見つけて、育ててあげることが、運動に対する自信をつくる一歩になります。
苦手があるなら、分解して練習すればいい。
焦らず、でもあきらめず、8歳のこの時期を一緒に楽しんでいきましょう。
📚 参考文献・根拠
- 文部科学省「子どもの体力向上推進資料」
- 幼児期運動指針(MEXT)
- Gallahue, D. L.『Understanding Motor Development』
- McClenaghan & Gallahue(1982)”Assessing Motor Development in Young Children”
- 各自治体(神奈川県・苫小牧市など)による発達めやすガイドライン