転びやすい・姿勢が崩れる子の特徴と家庭でできるチェック法
1. 「体幹が弱い子どもに見られる特徴とは?動きや姿勢の悩みを専門家が解説
「すぐ転んじゃうんです」「姿勢がすぐ崩れます」「授業中、机にダラッと寄りかかってしまって…」
こうしたご相談を、保護者の方から受けることがあります。
実はその背景には、「体幹の弱さ」が隠れているケースが少なくありません。
でも、「体幹が弱い」って、どういうことなんでしょうか?
私自身、小児の運動支援に関わる理学療法士として、数多くの子どもたちの姿勢や動きを見てきました。
そこで見えてきたのは、「体幹=筋力」ではなく、「動きを支える感覚やコントロール力」の育ちに関わるということ。
今回は、「体幹が弱いって何?」「うちの子もそうかも?」という保護者の方に向けて、
体幹の特徴・家庭でのチェック法・そしてすぐできる支援のヒントをお伝えします。
2. 家庭で見られるサイン
体幹が弱い子どもには、こんな様子が見られることがあります。
- すぐに床に寝そべる、ゴロンとする
- 椅子に座っているとだんだん前かがみになっていく
- 歩いていると体が左右にブレる
- 階段をのぼるとき、ぐらぐらする
- ソファやベッドに「飛び乗る」動きが苦手
- 外遊びより、室内でじっとしているのが好き
これらは一見「やる気がない」ように見えるかもしれませんが、
実は“体を支える感覚”がまだ育ち途中であることが多いのです。
3. チェックポイント(家庭でできる観察)
では、「体幹が弱いかも?」と思ったとき、どんなところを見ればよいのでしょうか。
✅ 家庭でできるチェック例
- 椅子に5分座っていられるか?
→すぐに前かがみ・横向きになる子は、姿勢保持が苦手かも。 - 片足立ちで5秒キープできるか?
→バランス感覚と体幹の安定性を確認できます。 - クマ歩きができるか?(四つん這いでお尻を高く上げて歩く)
→体幹〜肩〜股関節が連動して動かせるかがわかります。 - ジャンプした後に、ピタッと止まれるか?
→着地後にふらつく場合、腹部や体幹での“止める感覚”が弱い可能性があります。
ちょっとした日常の中で、こうした観察ポイントを意識してみると、
「この子、体の真ん中を支える力がまだ発展途上なんだな」と気づけることがあります。
4. 支援の第一歩(家庭でできる遊び・習慣)
体幹は、筋トレではなく**「遊び」や「生活動作」の中で自然に育てることができます。
以下におすすめの支援方法を紹介します。
▶ 雑巾がけレース(床の上を手で押しながら進む)
→体を前に支える腹筋・肩まわりが自然と育ちます。

▶ クマ歩き・カエル跳びなどの“動物あそび”
→体幹〜手足を同時に使う全身運動。動物のマネで遊びながら実施できます。

▶ バランスあそび(枕の上で片足立ち、バランスボールなど)
→不安定な場所で体を保つ練習に。家にあるものでOK。

▶ “丸くなる”遊び(布団の中で丸まる、トンネルくぐり)
→身体を丸める感覚=コアマッスルを使う感覚が育ちます。

▶ お手伝い(イスを運ぶ、洗濯物を運ぶなど)
→生活動作そのものが“体を使う力”につながります。
ポイントは、「がんばらせる」ではなく「楽しく続けられること」。
1日5分でも、“動くこと”に自信を持てる体験を積み重ねていくことが大切です。

5. まとめと伝えたいこと
体幹が弱い子どもたちは、体を支える力が未熟なために、
“動くのがしんどい”“じっとしているのが苦手”といったサインが見られることがあります。
でもそれは、「やる気がない」「集中力がない」からではありません。
私が関わってきた子どもたちも、ちょっとした遊びや生活の中で少しずつ体の感覚が育ち、
「立っていられる」「姿勢がくずれない」「疲れにくくなった」と変化していく様子を何度も見てきました。
大切なのは、“育っていないこと”を責めるのではなく、
「今の体を知って、どう育てていくか」に目を向けること。
今日から、できることから。
あなたのお子さんに合った“からだの真ん中”を育てる支援を、一緒に探していけたら嬉しいです。
📚 参考文献
- 佐藤哲史・森田哲史(2020). 動作感覚の教科書. 黎明書房.
- Ayres, A. J.(2005). 感覚統合と運動発達. 明石書店.
- 文部科学省(2020). 学習指導要領 体育編. https://www.mext.go.jp
- 日本小児理学療法学会(2022). 子どもの運動発達と理学療法. https://jspt.or.jp
- DESCラボ(2023). 発達障害のある子どもの体幹・バランス支援に関する解説.
- JPCスポーツ(2024). 体幹を鍛える運動あそびのススメ. https://jpc-sports.jp