はじめに:「一生懸命動かしてるのに、なぜ進まないの?」
クロールの練習でよくある悩みが、「腕も足も動かしてるのに前に進まない」という声です。
力いっぱい頑張っているのに、進めない…。そんな姿に、見ている大人も戸惑ってしまいますよね。
この記事では、感覚統合と運動の発達の視点から、クロールで前に進みにくい子どもによく見られる特徴と、家庭でできる準備や声かけについて紹介します。
なぜクロールで進めないのか?よくある理由と背景

① 力の入れ方にムラがある(固有受容覚の未発達)
クロールは「水を押す力」と「体を支える力」のバランスが必要です。
力の加減が苦手な子は、水をかく腕が曲がらなかったり、動きがギクシャクしたりして、前に進む力が生まれにくくなります。
② リズムよく動かすことが難しい(前庭覚・協調運動)
手足を交互にリズムよく動かすのは、発達のステップとしては意外と難しい動作。
片方の腕ばかり動かしてしまったり、バラバラになってしまうことがあります。
③ 息継ぎで体の軸が崩れてしまう(体幹の不安定さ)
クロールで「顔を上げる」動作は、体幹が安定していないと大きくバランスを崩してしまいます。
結果として水の抵抗が大きくなり、推進力が失われてしまいます。
家でできる!クロールにつながる体づくり
1. 床の上クロールごっこ
うつ伏せになり、左右の手足を交互に動かして進むごっこ遊び。
体を左右バランスよく動かす協調運動の練習になります。
2. タオル引きずり運動(体幹安定)
仰向けで寝て子どもの肩をタオルで持ち、親が引っ張って進ませる。
全身をまっすぐ保つ体幹トレーニングに。
3. ビート板バランスゲーム
お風呂や浅いプールでビート板の上に手を乗せ、浮きながらバランスを取る遊び。
水の上で体を支える感覚を育てます。
声かけのコツ:「スピード」より「動きのなめらかさ」を意識
- 「ゆっくりでもいいよ、きれいに水をなでてみよう」
- 「両手を交互に、1・2・1・2って数えながらやってみよう」
- 「手が遠くまで届くと、たくさん進めるよ」
速く動かそう!ではなく、“水の中で気持ちよく動く”感覚を育てることが大切です。
おわりに:前に進む経験が“自信”につながる
クロールでうまく進めないことは、「水がこわい」「体がうまく使えない」といった背景のサインかもしれません。
焦らず、“動きの感覚”を育てることを大切にしていきましょう。
子どもにとって、水の中で「できた!」という感覚は、心にも体にも大きな自信になります。
合わせて読みたい記事
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参考文献・参考サイト
日本水泳連盟 こども向けスイミングの指導方針
https://www.swim.or.jp/
『感覚統合と運動感覚の教科書』医道の日本社
https://www.ido-nippon.com/book/52252/
神奈川県「幼児期における運動の指針」
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/x3t/cnt/f537198/p1090670.html