ドッジボールを楽しむための大前提、それは「技術」ではなく「安心感」です。
なぜ「ドッジボールが怖い・嫌い」と感じてしまうのか?
多くの場合、理由は「痛みへの恐怖」と「予測不能な動き」にあります。特に繊細なお子さんにとって、硬いボールが自分に向かって飛んでくる状況は、脳が「生存の危機」と判断してしまうほどのストレスなのです。
運動が苦手な子の脳内で起きている「感覚統合」の課題
理学療法士の視点で見ると、運動が苦手な子は「感覚統合(五感から入る情報を整理する力)」が未発達な場合があります。
- 視覚認知の弱さ:ボールの距離感がつかめない
- 固有受容覚の未発達:自分の体をどう動かせば避けられるか瞬時に判断できない これらは「やる気」の問題ではなく、脳の情報の受け取り方のクセ。だからこそ、周りのサポートが必要なのです。
【厳選3種】ドッジボールが苦手でも笑顔になれる魔法のアレンジルール
21種類ものバリエーションがあるドッジボールですが、苦手な子が「自分にもできた!」と即座に実感できるのは、実はこの3つに集約されます。
1. 恐怖心を取り除く「転がしドッジ」|視覚認知を育てる第一歩
まずは「ボールが空中を飛んでくる」恐怖を取り除きます。
- ルール:ボールを常に床で転がしてのドッジボール。まずはここから

:ボールの軌道が2次元(平面)になることで、視覚的に追いやすくなります。「目で追って、足を動かす」という目と足の協調運動を育てる最高の練習になります。
2. 失敗が自信に変わる「復活ドッジ」|何度でも挑戦できる安心感
「当たったら終わり」というルールが、子どもを消極的にさせます。
- ルール:当たっても外野で1回味方と「ジャンケン」をして勝てば復活できる。

一度のミスですべてが否定される恐怖をなくすことで、脳がリラックスし、結果として体の動きもスムーズになります。「次がある」という安心感が自己肯定感を守ります。
3. 誰もがヒーローになれる「ドラクエドッジ」|役割分担で輝く工夫
運動能力がすべてではない、ゲーム要素を取り入れます。
- ルール:チーム内に「勇者(王様)」「魔法使い(ボールを渡す係)」「賢者(復活を呪文で助ける係)」などの役割を作ります。
具体的なルール構成(例): - 勇者(王様):チームに1人。この人が当たるとチームが負けになる重要人物。みんなに守られる役割です。
- 魔法使い(パスの専門家):ボールを拾って仲間に渡す専門職。自分で投げなくていいため、ボールを扱う「触れ合い」から練習できます。
- 賢者(復活の呪文):外野にいる仲間と「ハイタッチ」をすることで、仲間をコートに戻せる特殊能力持ち。走って仲間を助けるヒーローになれます。

直接ボールを投げなくてもチームに貢献できる「居場所」を作ります。「自分が必要とされている」という感覚が、運動への拒否反応を劇的に減らします。
その場で試せる!ドッジボールをみんなで楽しむための「魔法の声かけ」
ルールを変えたら、次は私たちの「言葉」をアップデートしましょう。
結果よりプロセス!本人が気づかない「小さな変化」を言語化する
「当たっちゃったね」ではなく、「今の、ボールを最後までよく見て避けようとしてたね!」と伝えてください。 結果ではなく「過程(プロセス)」を数値や具体性を持って伝えることで、子どもの脳に「正しい動きの記憶」が定着します。
主語を「私」にするアイメッセージで子どもの自尊心を守る
「(あなたは)もっと動いて!」は命令になり、プレッシャーを与えます。 これを「(お母さんは)あなたが一生懸命ボールを追いかけている姿を見ると、すごく嬉しいな」に変えてみてください。主語を「私(I)」にすることで、評価ではなく「想い」として伝わり、子どもの心のガードが解けます。
感覚統合の視点でサポート!「ボールが見えない・動けない」への具体的な介入
「運動神経が悪いから」と諦める必要はありません。遊びの中で土台は作れます。
目と手の協調運動(ビジョントレーニング)を遊びに取り入れる
ドッジボールの前に、ゆっくり飛ぶ「風船」でキャッチボールをしてみてください。ゆっくり動くものを捉える練習が、ドッジボールでの「予測する力」に繋がります。
力のコントロール(固有受容覚)を育てるタオル投げ遊び
ボールを投げすぎて肩を痛めたり、逆に弱すぎたりする子は、自分の筋肉の使い方の加減が苦手です。タオルを「シュッ!」と振る遊びは、理学療法の現場でも使われる、力の入れ具合を学ぶ良いトレーニングになります。

まとめ:ドッジボールの「やる気」を高める関わりが人生の土台になる
ドッジボールは単なる「あてっこ遊び」ではありません。 そこには、恐怖に立ち向かう勇気、仲間を助ける優しさ、そして「自分だって工夫すればできる」という成功体験が詰まっています。
「うちの子、運動が苦手で…」と不安なお母さん。 完璧にできなくて大丈夫。まずは今日、「今日、体育がんばったね」と、その場にいたこと自体を認めてあげてください。
大人の「見守るまなざし」と「ちょっとしたルールの工夫」があれば、子どもは10分で笑顔になれます。その笑顔が、運動だけじゃない、一生モノの自信(自己肯定感)という土台を作っていくのです。
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