走るのが苦手な子どもに親ができるサポートとは？

～感覚・姿勢・日常生活での工夫を紹介～

はじめに｜走るのが苦手な子、じつは多い？

「うちの子、走るのがどうもぎこちなくて…」
「運動会ではいつも最後になっちゃう」
そんな悩みをもつ保護者の方は、実は少なくありません。

走ることが苦手な子どもは、単に「体力がない」「運動神経が悪い」わけではない場合もあります。
体の使い方や感覚の発達にアンバランスがあると、思うように走れないことがあるのです。

本記事では、「感覚統合」の視点から、走るのが苦手に見える理由を解説し、日常生活でできるサポート方法をご紹介します。

子どもが走るとき、次のような様子が見られることはありませんか？

これらの背景には、「感覚」の未発達やアンバランスが隠れていることがあります。

前庭覚は「バランス感覚」や「動いているときの安定感」に関わる感覚です。

この感覚がうまく働いていないと、走るときに頭や体が左右に揺れたり、スピードを出すと転びそうになったりします。
見た目としては「リズムがとれない」「ふらつく」「急に止まれない」といった姿が目立ちます。

固有受容覚（こゆうじゅようかく）は、自分の体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚です。

この感覚が弱いと、走ろうとしても「力みすぎる」「力が抜けすぎる」といった極端な動きになりがち。
結果として、全身がカチコチになったり、スピードが出せなかったりします。

身体図式とは、「自分の体がどこにどうあるか」という感覚の地図のようなものです。

この感覚が未熟な子は、腕と足のタイミングが合わなかったり、手足の動かし方がぎこちなくなったりします。
「一生懸命走っているのに、なぜか不自然に見える」という子は、こうした感覚の育ちが影響しているかもしれません。

以下のような行動が見られたら、感覚のアンバランスが関係している可能性があります。

走る力は、特別な運動教室やトレーニングがなくても、日々の暮らしの中で少しずつ育てていくことができます。

ここでは「走る力の土台」となる３つの感覚を、家庭で育てる工夫をご紹介します。

走るときに体が左右にブレたり、ふらついたりする子は、「体幹の弱さ」や「バランス感覚の未熟さ」が関係していることがあります。

片足立ちチャレンジ
　→ 歯をみがいているときや、テレビを見ながら、足を1本だけあげてみましょう。初めは3秒、慣れてきたら10秒にチャレンジ！
　「ふらつかずに止まる力＝走るときの軸」を育てます。
階段や段差の上り下りを“ゆっくり”行う
　→ 子どもはついジャンプして降りたり、飛ばして登ったりしがちですが、
　「ゆっくり足を置く・バランスを取る」動きには、走る力のヒントが詰まっています。
クッションや座布団の上で立ってみよう
　→ 柔らかい場所は不安定なので、自然とお腹や腰に力が入り、バランスをとろうとします。
　その微調整が「体の支え方」を学ぶトレーニングになります。

「走る」という動きは、実は「ジャンプ」「着地」「腕振り」が全部リズムの上に乗って動いています。
リズム感が育つと、走るテンポが安定してスムーズに動けるようになります。

走るときの「ちょうどいい力の入れ方」や「スピード調整」は、体の内部感覚（固有受容覚）からくるものです。

この感覚が育っていないと、全身に力が入りすぎたり、逆にふにゃふにゃして思うように走れなかったりします。

洗濯かごやペットボトルを“あえて”運んでもらう
　→ いつもより少し重たい物を「どうやって運ぶか？」を考える経験が、「力加減を感じるセンサー」を刺激します。
タオルそり（引っ張る遊び）
　→ 子どもをバスタオルに乗せて引っ張ったり、おもちゃをタオルで引いて運んだり。
　引っ張る側・乗る側どちらも、全身の筋肉と感覚をしっかり使います。
クマ歩きやカエル跳び
　→ 手足を一緒に使う全身運動は、「自分の体がどう動いているか」を感じながら動く練習になります。
　特にクマ歩きは、肩やお尻の安定にも効果的です。